二話『川の上の修羅場』

ユミは渋々自分の手を離した。露になった彼女の顔は涙で濡れて、泣き腫らした目元は薄ら赤くなっていた。

『タツミさん……』

『ああ、すまないユミ。君を傷つけるつもりなんてなかったんだ。本当にすまない、泣かせてしまって』

タツミは眉を下げて、ユミの両手を握り締めると泣きそうな顔で何度も謝った。

それにユミは少しばかり気を良くしたらしく、苦しみから癒えた表情に緩んだ。

『タツミさんの方が泣きそうじゃない。ふふ、可笑しいわね』

ユミは頭を下げて苦しそうに顔を歪めるタツミに楽しそうに笑った。泣き顔は嘘だったように消えて、クスクスと声を漏らす。

そんな彼女に、タツミも笑った。

先程までの重苦しい雰囲気は消え、タツミもユミも笑い合って幸せそうに寄り添った。