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茶色が見つけた地下のホール、少年によって「茶色のホール」と命名された場所では、儀式に向けた剣作りが進んでいた。
激しく燃え盛る炎の中で朱色に輝くまで熱された鉄筋は、太めとガキどもの使う「金槌」で何度も叩かれ、薄く長く鍛えられていた。太めとガキどもの全身からは汗が絶え間なくにじみ出していた。その汗を拭う暇もなく、炎に突っ込んだ何本もの鉄筋を次から次へ取り出しては、ぎこちない手つきで叩き続ける。熱が冷めて黒くなった鉄筋は、また炎の中に突っ込む。
何人かのガキどもが大きな板と布で作られた「ふいご」をゆっくりと動かし、炎に空気を送り続けている。大量のパンを練り固めてから蒸し焼きにした黒い塊が燃料だった。空気が送り込まれる度に炎はさらに赤く黄色く燃え上がり、鉄筋はまた熱を帯びて赤く輝きだす。
別の一角では剣に刃をつけていた。平らな瓦礫に水をかけ、形を整えられた剣を押し付けるように何度もこすりつけ根気強く磨いていく。黒く煤けた剣の表面は明るく磨かれ、それらしい感じに仕上がっていく。さらに別の一角では、柄の部分に切り裂いた布をぐるぐると何重にもきつく巻きつけている。全ての作業は淡々と進められていた。
不揃いな出来上がりのまま並べられている剣の前で、赤い髪の若者がガキどものひとりを問い詰めていた。
「なんだ、この出来は」
問い詰められたガキは答もせずに、布を引っ張りながら、なるべく均等になるよう、懸命に巻き続けていた。
「おい、聞いてんのかよ」
赤い髪の若者の甲高い声は鉄を打つ音に紛れ、ガキどもの耳にはほとんど届いていないようだった。
「おう」
若者の目の前に現れた太めは、片手に「槌」を、もう片方の手にはまだ赤く光る鉄筋を持っていた。
若者は太めの姿を見てすぐに口をつぐんだ。
「先にこの金槌から作らなきゃならなかったんだからよお、ちょっとぐらい時間かかっても勘弁してくれよ」
太めは顔の下半分を覆い隠す髭から滴り落ちる汗を金槌を持った腕でぐいと拭った。腕も胸も、筋肉で覆われているのが見て取れる。片足は少しだけ引きずっていた。怪我をしてからもうだいぶ経っていたが、完全に元通りというわけにはいかなかった。
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