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風が爽やかに吹く。ピクニックでもしたらとても気持ちよさそうな天気。そんな雰囲気をぶち壊すように全力で叫びながら走っている男がいた。
「うぇああああああああああああっ!!」
大量の汗をかきながら必死な形相で逃げている男、ユウトは考えていた。
なぜ自分がこんな目にあっているのか・・と。
逃げている理由の元となる相手を見るべく後ろを振り返ると
「待てゴラアァァァァァっ!!!」
ユウトを追いかける集団のひとりが同じく必死な形相で叫んでいた。
その集団にユウトの知り合いはひとりもいない。ただの山賊の群れだ。
「待てと言われて待つわけねーだろ!!・・・ていうかなんで追いかけてくんだよ!金なら持ってないって言ったじゃねーか!!」
「言いながら仲間をふたりぶっ飛ばしておいてハイそーですか。って逃がすわけねーだろうが!?」
「こっちはナイフ突きつけながら脅されたんだ!先手必勝!!」
「ふざけんなぁぁぁぁぁっ!!!!」
互いにそんなやりとりを繰り返しながら山道を走り回ってすでに30分が経過しようとしていた。
ユウトはこのまま町まで逃げて警備団の連中に押し付けようと考えていた。
だが・・・
「チッ・・・」
足の早い数人の山賊が先回りしてユウトを挟む形になった。
「へっへっへ!追いかけっこは終わりだ。出すもん出してぶっ殺されるのとぶっ殺されたあとに死体漁られるの・・好きな方を選びな。」
走り回って息がきれてるにも関わらず余裕そうな笑みを浮かべて問いかける山賊の頭らしき男にユウトは睨みながら答える。
「だから金は持ってないって何回言わせんだよ。だいたいひとりを集団で囲んで恥ずかしいと思わねーのか!」
山賊相手にそんなことを言っても無駄だとわかりつつどうにか逃げる隙を探る。
「ハッ!思わねーな!どんな小物だろうが全力で仕留める!それが俺ら『幻狼山賊団』よ!!」
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