私、みなみ君の匂い好き。言わないけど。

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黒を基調としたベッド、多少散らかった室内、モノトーンの勉強机。 テレビには今流行りの芸人が面白いギャグをかましている。 ベッドに寝転がり、私はそれをちらりちらり、と横目で見ながらスマートフォンをいじっていた。 思ってもないこと、受けを狙った文章、相手にしてもらいたくて垂れ流す文章たちは、どこか哀愁が漂っている。 「しずくー?」 一人暮らし特有の狭いキッチンで、冷蔵庫の前にしゃがんでいるみなみ君が私を呼んだ。 「なにー?」 「お腹すいたよ、何か作ってー。材料ないけど。」 みなみ君は笑いながらベッドまでやってきて私に頼んだ。私はスマホから目を離し、体を起こした。 「材料がないんじゃ、何も作れないよ。冷蔵庫の中には何があるの?」 「玉ねぎと、卵、豚肉、豆腐、…あとはナス。」 私は少し考えて、キッチンに向かった。 「わかった、適当に作るよ。みなみ君、調味料揃ってないんだっけ?」 「うん、醤油しかないよ。あと塩とか砂糖とか胡椒があるかな。」 「…もう、次来る時までに調味料買っといてって言ったじゃん。」 「ごめんって。男の一人暮らしの調味料なんてこんなもんだよ。」
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