私、みなみ君の匂い好き。言わないけど。

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食べ終わった私はベッドにもたれて虚空を見つめた。食後はどうしても惚けてしまう。 「先にお風呂入る?」 みなみ君が食べ終わった皿を台所へ持っていてきながら言った。 「んー、じゃあそうする。」 私は立ち上がりバスタオルを探し出して風呂場へ向かった。 「…みなみ君、覗かないでよー?」 「わからないよー?」 みなみ君を怪しい指の動きをしながら私を見て笑った。笑顔が可愛い。 分かっている。みなみ君が絶対覗きをしないこと。それが、私には悲しい。 シャワーの温度が適温になるまで自分で温度調節する。私の一人暮らしのお風呂と同じだ。 こんな小さいことで私は嬉しくなるなんて、安いなって思う。 みなみ君は私を好きにならない。私はみなみ君の『妹』だから。みなみ君は私の『兄』だから。 私が愛情に飢えているように、みなみ君も愛情に飢えている。それは、異常なほど。 私も甘えたがりで、みなみ君も甘えたがりだ。同じ性質で、嬉しいけれど、苦しい。 ふたりの矢印が同じ方向を向いていたら、いつまでたっても二人は巡り合わないの。 私がみなみ君に求めていることを、みなみ君は私ではなく違う人に求めている。それは、それは耐え難い、苦痛と嫉妬。 白い肌、色素の薄い髪、猫のようなつり目。全てあなたのためのもの。あなたのものなのに、あなたがものにしないのなら、全部意味はないの。 他人の賞賛ではなくあなたの愛情が欲しいのに。 火照った体から滴る雫をタオルでふき取り、寝巻きのワンピースを着た。 少し、露出が多いのだけど、意識してくれるかな。
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