第1章

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 小高い丘の上に立つ工場で、一人のおじさんが悩んでいました。 「どうしたら、良いんだ。どうやったら効率よく、血税を集められる」  おじさんは独り言を言いました。  そこに一人の老婆がブルブル震えながら、奥の部屋から歩いてやって来ます。  老婆はしばらくおじさんをジッと見ています。 「空き缶や。朝ご飯はまだかのう」  老婆が言いました。 「朝ごはんは食べたばかりだろう。ノサヨばあさん」  空き缶おじさんは言いました。 「そうだったかのう」 「俺はどうやったら血税を多く集められるか考えているんだ。邪魔すんな」  そう言うと空き缶おじさんは、アンパンを焼いてみました。  しかし、ヒーローの体になじみません。 「アンパンのヒーローは、ジャムの野郎しか作れないのか……」  空き缶おじさんの知り合いに、アンパンの頭を持つ正義のヒーローを作れるおじさんが、遠い外国にいました。  空き缶おじさんはそれをマネようとしたのです。しかし、失敗でした。  空き缶おじさんは、めげることなく、食パン、メロンパン、カレーパンなどを作りましたが、やっぱりヒーローになりません。 「キー! 私の食事をよこせー」  ノサヨばあさんが騒ぎます。  空き缶おじさんは、ヒーロー作りに失敗した、アンパンなどをノサヨばあさんに与えました。しかし、お腹いっぱいなのに、食べようとするのでノサヨばあさんは戻してしまいました。 「空き缶や。朝ご飯はまだかのう」  ノサヨばあさんが言いました。 「さっき食ったばかりだろう」 「お腹減ったんだよー」 「吐いたからだろう。クソばばあ」 「キー! 私の食事をよこせー」  そう言うと、目をカッと見開く。 「血税を集めるには消費税に決まってるだろう」  ノサヨばあさんが突然叫ぶ。 そして、紙だか、布だが、良く分からない、なぞの物に「消費税」と書きました。そしてその消費税をヒーローの首の場所にくっつけると目と鼻と口が浮かび上がりました。 「しょうひぜいー!」  その謎の物体は、ヒーローの体に馴染み、動き始めました。 「やったー。消費税マンが誕生したぞ」  空き缶おじさんは大喜びします。  こうして消費税マンは生まれました。  その様子をノサヨばあさんはジッと見ます。 「空き缶や。昼ご飯はまだかのう」  ノサヨばあさんの中で朝から昼へ変わりました。 「消費税マン。お前は、民衆から血税を集めるために生まれたんだ」
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