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喧嘩友達のようだけれど、いつも私を守ってくれた。
困ったときはいつも、瞬ちゃんが助けてくれた。
私も瞬ちゃんも、お互い以外を知らないで今まで付き合ってきた。
「私には瞬ちゃんがいるもん、だから大丈夫」
そう言うと、本当に大丈夫な気がしてきて、自然な笑顔が内から溢れたのを自分で感じた。
瞬ちゃんの異変に気付いたのは、少しあとだった。
抱き締めたまま何も言わない瞬ちゃんの顔を、下から覗き込むように見た。
「……瞬ちゃん?」
瞬ちゃんは遠くを見ていて、私の角度からはよくわからなかったけれど、何か思い詰めた様子なのはわかった。
またしばらくして、ゆっくり体を離された。
両腕を掴まれたまま、瞬ちゃんは私を見据えた。
その、何か意を決したような様子に、私は嫌な予感を覚えた。
瞬ちゃんが口を開いた。
「……明日香、俺、留学行こうと思う」
「留学……」
それは、別段意外な言葉ではなかった。
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