11/12
前へ
/128ページ
次へ
喧嘩友達のようだけれど、いつも私を守ってくれた。 困ったときはいつも、瞬ちゃんが助けてくれた。 私も瞬ちゃんも、お互い以外を知らないで今まで付き合ってきた。 「私には瞬ちゃんがいるもん、だから大丈夫」 そう言うと、本当に大丈夫な気がしてきて、自然な笑顔が内から溢れたのを自分で感じた。 瞬ちゃんの異変に気付いたのは、少しあとだった。 抱き締めたまま何も言わない瞬ちゃんの顔を、下から覗き込むように見た。 「……瞬ちゃん?」 瞬ちゃんは遠くを見ていて、私の角度からはよくわからなかったけれど、何か思い詰めた様子なのはわかった。 またしばらくして、ゆっくり体を離された。 両腕を掴まれたまま、瞬ちゃんは私を見据えた。 その、何か意を決したような様子に、私は嫌な予感を覚えた。 瞬ちゃんが口を開いた。 「……明日香、俺、留学行こうと思う」 「留学……」 それは、別段意外な言葉ではなかった。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加