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ある日、仕事を終えた母親がいつも通りに、早足で公園に駆けつけました。しかし、女の子がいません。
母親は必死に捜しましたが、女の子は見つかりません。
何故なら女の子は病院に運ばれていたからです。
蝶を追いかけて公園から飛び出した、咄嗟の事故でした。
女の子を轢いてしまったトラックの運転手はすぐに救急車を呼びましたが、女の子は既に呼吸をしていませんでした。
女の子はしばらく自分が死んでしまったことに気づかないまま、公園にいました。
いつものベンチに座ってお母さんが迎えに来るのを待っていました。
捕まえた蝶をお母さんに見せてあげたくて。
「ほら、綺麗なチョウチョを捕まえたよ」
ただ一言、それを伝えたくて。
一方の母親は、病院で娘の亡骸の前で泣き崩れていました。
「ゴメンね、ゴメンね」
繰り返し繰り返し、それだけを呟きながら。
彼女にとって娘は生きる希望でした。娘の笑顔が、辛い毎日を乗り越えるための唯一の支えでした。
全ての希望を失った彼女は、自ら命を断ってしまいました。
女の子はずっと待っていました。公園が無くなり、お店やマンションが建ってからもずっと、あの公園のベンチがあった場所で。
私は女の子の手を引きました。
「行こう」
「ダメだよ、お母さんが迎えに来るもの」
私は優しく微笑みました。
「大丈夫よ。お母さんが待っているところに行くの」
「本当?おねえさんはお母さんのお友だちなの?」
「そうよ」
私がそう言うと、女の子は嬉しそうに私の手を握りました。
小さな小さな手。
亡くなってもう数十年が過ぎているのに、その手にはぬくもりがありました。
「あなたは優しい子ね。あなたのお母さんを助けてあげてね」
私は霊視で見た近くの病院に向かいました。
子供が入院すると、悲しそうな女の霊が現れると言う病院へ。
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