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私――野々山 若菜、23歳、社会人1年目。
いつもの様にSNSをチェックしていると、中学の頃に片想いをしていたタケト先輩の名前を見つけた。
そのステータスは『◯◯医療大学 在学中』となっている。
懐かしさに誘われた私は、10年前の記憶を遡る。
中学1年。
階段ですれ違ったその瞬間、恋に落ちた。
先輩が所属する野球部の朝練を、ベランダからこっそりと眺めることが、私の日課となった。
ある日『即席陸上部』に招集されると、そこには先輩の姿があった。
しかし話しかけることはできず、更には先輩の前で大失態を犯し、競技にも負けてしまう。
ようやく先輩とメールのやり取りを始めるが、几帳面な先輩は必ず件名の『Re:』を消した。
想いが一方通行であることを証明するかのようだった。
中学2年。
部活動が忙しくなり、遠かった先輩との距離は更に広がる。
前年に引き続き『即席駅伝部』に選ばれ、迎えた競技中、ゴール手前で先輩が私にエールを送ってくれた。
結果、私は区間3位という奇跡的な記録を収めた。
しかし想いは伝えられないまま先輩は卒業し、初恋は終わりを迎えないまま、時間と共に散っていった。
先輩をSNSで見つけてから数週間後、私は衝撃の事実を知る。
先輩はその後、急性骨髄性白血病を患い、闘病をしていた。
ほぼ完治した今は、元気に医療大に通っているという。
私は初恋と過去の自分を清算するために、先輩にメッセージを送る。
ようやく初恋を終わらせることが出来た私は、帰宅した彼氏の胸に飛び込み、『今を一生懸命生きること』を誓うのだった。
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