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「ふふ。興奮して寝れなかったの?」
平静を装って受け答えをしていると、なんだかケンちゃんに嘘ついているみたいな感じがした。
ラインを終えたすぐ後、私が何をしていたのか、もちろんケンちゃんは知るはずない。なのに、「何してた?」と聞かれ、見透かされているかもって……一人焦ってしまった。
何も、やましいことはないのに、後ろめたく感じるのは、あの後届いたラインのせい……。
そのあとも、ケンちゃんは目的地に着くまで絶えずお喋りをして私を楽しませてくれた。
建物の一階エントランスに着いて、あらためて彼を見る。
「あ、肩が大変なことに……! やっぱり濡れちゃったね。大丈夫?」
「俺、身体だけは丈夫だから風邪ひかないよ。大丈夫。それより和花ちゃんは? 濡れてない?」
「大丈夫。濡れてない。ありがとう」
私はバッグからハンカチを取り出すと、濡れたケンちゃんの肩を拭いてあげた。
ケンちゃんのお陰で、私はほとんど雨に濡れなかった。
「実はさっきここへ来てチケット買っておいたんだ。どうぞ」
「え?! わざわざ先に?」
ケンちゃんはチノパンのポケットから水族館のチケットを取り出して見せてくれた。
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