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「和花ちゃん、あっちの水槽も覗いてみようよ。行こう!」 「……うん!」  ケンちゃんはさりげなくリードしてくれた。 「ケンちゃん見て。ブルージェリーだって。かわいい。くらげって見てると癒されるよね」  言いながら見上げたら、彼は渋い顔をしていた。 「あれ? もしかして、くらげ嫌いなの?」 「実は俺、学生の時にさー、男友達と海行ったんだけど、海に入って五分もしないうちにくらげにビリッて刺されたんだ。痛くてテンション下がった時の記憶が蘇る……」 「え? 入って五分?!」 「うん。そのあとずっと水で冷やして、全っ然、海を堪能出来なかった。野郎の友達が、がち泳ぎしている姿を砂浜で見守っていたよ。……監視員のように」 「監視員?」 「うん。あいつらが勝手に抜け駆けしてナンパしないように。砂浜で俺は仁王立ちよ! 熱い視線を二人に送りまくった」 「ケンちゃんって、本当面白いね!」  彼はその時の監視員ぶりをジェスチャー混じえて再現してくれたり、くらげ跡がまだあると言って、腕の傷を見せてくれた。  デートする前は、緊張していた。なのに、ケンちゃんの醸し出す明るい雰囲気のお陰で、それがすっかり解かれて楽しくなっていた。 「いいよね。海! 私もよく……」  だからつい、あまり考えもなしに口走っていた。 「私もよく? なになに? 和花ちゃんも海とかよく行くの?」  目を輝かせ、興味津々に尋ねられて私はどう答えたらいいか少し迷った。 「……昔は、美樹とかと、よく行ってたよ」  私が笑って答えると、ケンちゃんはさらに目を輝かせた。
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