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ここまで想ってくれる彼に、感謝の気持ちでいっぱいになった。
「俺と、結婚前提で付き合ってください」
ここで泣いたらダメ。……泣かない。
私は下を向き、ケンちゃんの手の中、ぐっと握り拳を作った。
深呼吸をもう一度ゆっくりとして、それから顔をあげて、しっかりとケンちゃんの目を見た。
「ケンちゃん、ありがとう。だけどごめんなさい」
笑うことはできない。泣くこともできない。
真っすぐケンちゃんの目をただ、見つめた。
「ケンちゃんの気持ちは本当に嬉しい。でも。私は幸せにして欲しいんじゃないの。お付き合いは……できません」
「……え? 幸せになりたくないの?」
「ううん。幸せにはなりたいよ。……その幸せはね、自分の手でつかみたいの」
私は困惑するケンちゃんに優しく微笑んだ。
「結婚前提が、重たかった? それともやっぱり、元カレが……」
「うん。瀬名さんが好き」
私ははっきりとケンちゃんに言った。おかげで、ケンちゃんは目を丸くして固まった。
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