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「瀬名さんはね、変わろうとする私を助けてくれるんじゃなくて応援して、見守ってくれる人なの。どうしたらいいって聞くと、人と向き合うことを恐れる私に逃げるな向き合えって言える人。自分の意見を人に言っていいんだよって。私ね、瀬名さんみたいになりたいの。自分の気持ちを誤魔化さずに彼みたいに自由になりたい。逃げているうちは自由になれないから……」
「瀬名さんのようになりたい……のか」
ケンちゃんは肩を落として言った。
「……ケンちゃんと付き合えば、絶対幸せになれると思う。でも……それじゃ、私は自分の気持ちを偽り続けることになる。実家にいた時と何も変わらない。
瀬名さんのように本当の意味で自由にはなれない。だから……ごめんなさい。私はケンちゃんの気持ちに答えることができません」
私はゆっくり伝わるように誠意を込めて言った。
「俺じゃ、ダメってことか……」
その言葉に私は何も答えることができなかった。
私たちが黙ってしまうと、代わりに小さな秋の虫たちが、鳴き始める。
公園中に綺麗な音を響かせる。
「…………あーーーっ!」
突然ケンちゃんは頭を抱えて叫んだ。
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