** 15 **

9/11
前へ
/331ページ
次へ
「やっぱり俺は、優し人、いい人止まりかあああッ!!」 「け、ケンちゃん……?!」  ケンちゃんの大声に私は慌てた。 「くそー、ちくしょう! 完全に俺の負けだ…! あー俺、何やってんだろ!」 「ケンちゃん。落ち着いて! もう夜中だからお願い声を抑えて……」  ケンちゃんはハッとなって、電池が切れたように急に静かになると、ベンチに座った。 「……ケンちゃん。大丈夫?」  私はそっと近寄り、声をかけた。 「…あんまり大丈夫じゃない…」 「本当に、ごめんなさい……」  ケンちゃんは、しばらくしてふっと笑った。 「いや、俺が完全に力が及ばなかっただけだから。和花ちゃんを振り向かせるチャンス、俺、いっぱいもらったのにな。自分が不甲斐なくて……ごめん、叫んで悪かった。驚かせたね」 「ううん。私が自分の気持ちを見ようとしなかったのがいけなかったの。ケンちゃんの優しさに甘えた私が悪かったの、本当にごめんなさい」  深々とケンちゃんに向かって頭を下げた。 「……あーあ、俺、酔い、すっかり醒めちった」  ケンちゃんはふらりと立ち上がった。 「俺は君の魅力に完全に酔っていた」 「……えっ、と……?」
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1074人が本棚に入れています
本棚に追加