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「やっぱり俺は、優し人、いい人止まりかあああッ!!」
「け、ケンちゃん……?!」
ケンちゃんの大声に私は慌てた。
「くそー、ちくしょう! 完全に俺の負けだ…! あー俺、何やってんだろ!」
「ケンちゃん。落ち着いて! もう夜中だからお願い声を抑えて……」
ケンちゃんはハッとなって、電池が切れたように急に静かになると、ベンチに座った。
「……ケンちゃん。大丈夫?」
私はそっと近寄り、声をかけた。
「…あんまり大丈夫じゃない…」
「本当に、ごめんなさい……」
ケンちゃんは、しばらくしてふっと笑った。
「いや、俺が完全に力が及ばなかっただけだから。和花ちゃんを振り向かせるチャンス、俺、いっぱいもらったのにな。自分が不甲斐なくて……ごめん、叫んで悪かった。驚かせたね」
「ううん。私が自分の気持ちを見ようとしなかったのがいけなかったの。ケンちゃんの優しさに甘えた私が悪かったの、本当にごめんなさい」
深々とケンちゃんに向かって頭を下げた。
「……あーあ、俺、酔い、すっかり醒めちった」
ケンちゃんはふらりと立ち上がった。
「俺は君の魅力に完全に酔っていた」
「……えっ、と……?」
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