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「素敵なツリーが見えてよかった。ここに連れて来てくれてありがとう」
私は横で一緒に巨大ツリーを見上げる怜司に笑顔でお礼を言った。
「喜んでもらえてよかった」
怜氏はツリーから私に視線を移すと、にこりと微笑み私のおでこにキスを落とした。
タイミングよく、柱時計の鐘が鳴り始める。
「あ、七時を知らせる鐘かも!」
私はツリーの後ろにある、柱時計を見た。
広場を行く全ての人に時を知らせるため、大きな鐘の音が厳かに鳴り響く。
「見て、和花。あれ」
私は鐘の音に耳を傾けていた。
声をかけられ、柱時計から瀬名さんが見つめる視線の先、広場の方を見た。
「あれ……?」
私たちから数メートル離れた広場の真ん中、黒のトレンチコートを着たサラリーマン風の人が、腕時計を見るしぐさをしたまま固まっていた。
さらにその人の前を通り過ぎた仕事帰りらしい女性二人も、固まった人を見て喋っていたのに、急に笑顔のまま時を止める。
「……怜司、なんか様子おかしくない?」
私は横にいる怜司の顔を見た。
「和花、あそこも」
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