** 17 **

22/26
前へ
/331ページ
次へ
 リヅは顔だけを出して大人しくバスケットに収まっていた。それを手に下げ、大きな花束を持っているのはケンちゃん。  手拍子がどんどん大きくなっていく。みんながケンちゃんのために並び道を作る。  英語の歌詞の独奏が流れる直前、手拍子がぴたっと止まった。  ケンちゃんは私たちの元へゆっくり近づいてくる。  踊っていた人もそのケンちゃんを先頭にゆっくり歩いて来る。  わけが分からなかった。  でも、私の胸は、何かが起こりそうな予感にドキドキと高鳴り続ける。  私の正面に立つとケンちゃんは、にこっといつもの笑顔を浮かべた。  どうリアクションを取ったらいいのかなと困って、私は怜司の顔を覗いた。 「瀬名さん!」  曲が最後のサビに入る直前、ケンちゃんは怜司の名前を呼んだ。そして、  その花束を怜司に向かって投げつけた。 「えっ!?」  曲がサビに入った。  花束を受け取った怜司は、急に私の前に立ち、ステップを華麗に踏み、踊り始めた。  まさかの展開に私が息を飲む。だけど、サプライズはそれだけじゃなかった。
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1073人が本棚に入れています
本棚に追加