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「あれ……?」
カーテンを開くと窓の外から、降り始めたばかりの雨の匂いがした。
網戸を開け、夜の闇に手を差しだして確認する。ポツポツと小さな雫が、私の手のひらにまだら模様を作っていく。
「明日、雨かな……」
初デートが雨になりそうで普通なら少しがっかりするところ。なのに私は逆で、雨で良かったと思った。
カラカラカラ……と、網戸と窓をスライドして閉じる。カーテンを閉めたところで『ピロン』と、メッセージが届いたと、スマホが知らせてきた。
そこに浮かんでいた名前を見て私は、息を吞んだ。
*
「こんにちは」
「おー、……ちわ! 今日は来てくれてありがとう。 久しぶり。和花ちゃん」
次の日。待ち合わせ場所である駅の東口に私は十五分前に着いた。
静かに細く降る霧雨の中濡れないように、でも、すぐに気づいてもらえるような場所に立って、キョロキョロしながら待っていたら、駅構内ではなく雨の中からケンちゃんは現れた。
「和花ちゃん、今日もかわいいね! その服似合ってる!」
「ありがとう。ケンちゃんもおしゃれですてきです」
私は、小花柄ワンピに薄手生地の白に近いイエローカーディガンを羽織った明るめのコーディネート。
ケンちゃんの格好は、ブラックのシャツにボーダーのカットソー。ベージュのクロップドチノを合わせた大人っぽさのあるカジュアルスタイルだった。
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