漆黒の封筒

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「──でさぁ、今日もゲーセンに付き合ってくれよぉ」 「またかよ?」 守が呆れながら言った。 いつもの学校が終わり、3人で廊下を歩いて玄関に向かっていた。 その途中で、俊明が今日もゲーセンに行きたいと言ってきた。 「今日のお目当ては何なんだよ?」 俺も半分呆れながら、苦笑して訊く。 「今日はフィギュアじゃないんだなー」 チッチッと舌を鳴らしながら、人差し指を振る。 そんな俊明を、ふたりしてジト目で見た。 「格ゲーの試合があるから、その練習に行きたいんだよ」 「試合に出るのかよ?」 「おぅ!何たって優勝すれば、モネちゃんの限定フィギュアがもらえるんだぜー!」 キラキラ目を輝かせながら言う俊明。それををポカーンと見る俺と守。 しばらくの沈黙の後、ふたりでぷっと吹き出した。 「俊明には負けるわ、いろんな意味で」 「ホントにな」 ふたりで笑い合って、俊明の肩に手を回した。 「練習に付き合ってやるから、俺が勝ったら何か奢ってくれよ」 「それ、俺も乗った」 守が俺の肩に手を回して言う。 ふたりの体重が掛かった俊明は、苦しそうな声を上げた。 「おーもーいぃ」 「ははは」 笑って俊明から離れる。 「いいけど、俺に勝てると思うなよ?」 「言ったな?」 俺達は笑いながら、ゲーセンへと向かうことにした。
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