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声を発したのは、ひとり落ち着いていた男だった。
「とりあえず落ち着こーぜ。この変な状況になってるのは、ここにいる全員なんだからよ」
そう言われ、皆は黙る。少し冷静になったようだ。
「俺は三津谷省吾(みつや しょうご)。学校帰りに気付いたらここにいた。皆は?」
そう言って皆に訊く。
三津谷は顎ヒゲを生やした、ガタイのいい男だ。
こんな状況下に放り込まれたと言うのに、冷静なあたり肝が据わっている。
「……僕は内藤勇気(ないとう ゆうき)です。彼女と一緒に図書館へ行ってました。でも気付けばここに…」
三津谷の後、口を開いたのは彼。
内藤は茶色の短い髪。ひょろっとしていて、見るからに大人しそうな草食系男子だ。
彼女──と目を合わせていた、先程まで泣いていた子が話し出す。
「小沢真理子(おざわ まりこ)です。勇気と一緒だったんですが…」
しかし内藤と同じく、気付けばここにいたと言う訳か…。
小沢はこの10人の中で一番小柄だった。茶色いショートボブ。一番小柄なのに、胸がとても大きい。内藤の腕にくっついているので、それが更に強調されていた。
「俺!秋山充(あきやま みつる)。部活が終わってひとりで片付けしてたら、意識がなくなってさ!起きたらここにいた!」
坊主頭が手を上げて喋り出した。
坊主からして、部活って言うのは野球部だろうな。
「僕は…手戸一郎(てど いちろう)だ。家にいてゲームをしていたんだが、インターフォンが鳴るから出てやったんだよ。家には誰もいなかったからね。そしたら襲われたんだよ!そして目が覚めたらここさ…」
ズレた眼鏡を直しながら言った。
手戸は見るからにオタクだと分かった。黒色の長い髪は肩まである。前髪も同じくらいあり、黒縁の眼鏡を掛けている。
その眼鏡はよくズレるのか、しきりに定位置に戻す動作をした。
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