漆黒の封筒

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「わ、私は塩田友梨(しおた ゆり)です。買い物に出掛けて…誰かに声を掛けられて…。そこから記憶がないんです」 塩田もショートボブだった。天然パーマなのか、とてもくりくりした髪型だ。鼻と頬にそばかすがある。 「私は宇吹日菜です。皆さんのように、何をしていたのか覚えていなくて…。ただ、目が覚めたらここにいました…」 塩田の隣にいた宇吹さんが、次に自己紹介をした。 宇吹さんは俺の方をチラッと見る。次どうぞと合図された気がしたので、自己紹介をすることにした。 「一ツ橋成哉です。友達とゲーセンに行ってて、俺も誰かに襲われた気がします。意識が遠退いていって、気付けばここに…」 皆と同じように言ってみた。 まだ自己紹介をしていないのはふたり。 ギャルの女が私もするの?みたいな嫌そうな顔になる。 しかし仕方なしに口を開いた。 「…迎井美伽(むかい みか)」 迎井はそれだけを言った。 迎井はスカートをこれでもかっ!と短くしているので、正直…下着が見えそうだ。 だるそうに、目に付いているつけまつげを触っている。 …後は不良の男だけだったが、不良は口を割ろうとはしない。 しかし誰も紹介してくれとは、言えなかった。 「最後のあんたは?」 だが三津谷は不良に尋ねた。さすが、肝が据わっている。 「……丸熊竜治(まるくま たつじ)」 丸熊はため息混じりに名前だけを言った。 …しかし何回見ても丸熊には慣れない。 赤髪のソフトモヒカンに、左目近くに入れられている刺青。そして学ラン姿…。 全てが強調されていて、怖いとしか思えない。
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