漆黒の封筒

23/32
前へ
/542ページ
次へ
よくは見ていないが、遠目で見る限り、ただの真っ白な輪っかだ。 「え?首輪とか付いてんの!?」 秋山は驚いた表情をして、自分の首を確認する。 …気付いてなかったのかよ。 「時限…爆弾とかじゃないよね?」 迎井がぽつりと言う。その言葉に、一気に背筋に寒いものが走った。 「いや…時限爆弾ではないと思う。音が、しない」 三津谷がそれを否定する。 澄まして聴いてみたが、カチカチと、時間を刻む音はしなかった。 「でも…まだ作動していないだけ、かも…」 そう。まだ時限爆弾ではないと言う確証は、何処にもない。 内藤は小沢の首輪に顔を近付けて、まじまじと見ていた。 「ただの輪っかか、首輪みたいですね」 その言葉に少し安堵する。何故付いているのかと言う疑問は残るが、何もないことに越したことはない。 「じゃあ外せばいいんじゃないのかい?」 「でも何かは分からないから、無理に外さない方がいいでしょ?」 首輪についての論議が始まる。 「…早く帰りたいな」 そんな中、宇吹さんが言葉を零した。 「何か用事でもあったの?」 「特に用事はないんだけど、犬を飼っていて…。その犬の世話は私しかしないから」 「そっか、それは気になるよね」 「…うん」 宇吹さんは寂しそうに頷いた。儚げながらも綺麗なその表情に、俺はまた見とれてしまった。 「待って下さい!!!」
/542ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2483人が本棚に入れています
本棚に追加