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目に飛び込んできた光景──。
それは変わり果てた姿で、床に転がる丸熊。
その死体だった。
丸熊は小沢に殺された。それは小沢自身が俺達に言い、そのことは宇吹さんも知っている。
だがそれでも……友達が犯した凶行の跡など、見たくないだろう。
それに結局見てしまうなら、知らないまま見てしまうより、知ってからの方が、衝撃が少ないと思ったのだ。
「あのさ……」
一呼吸間を空けて、見たことを話し出す。
「……中に。丸熊が…いるんだ……」
敢えて『死体』とは言わなかった。いや、何となく言えなかった。
でも意味が分かった宇吹さんは、目を大きく見開いた。
その後すぅーっと、目を伏せ落としていく。
「……ありがとう」
そう言って、俺のシャツの裾をきゅっと握る。
一瞬驚いてしまったが、怖いんだろうな…と思った。
「ここで待ってる…?」
訊ねるが、宇吹さんはふるふると首を振る。
「分かった」
答えて、そっと彼女の手を握る。
そのまま、丸熊から距離を置きながら中に入った。
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