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壁に何かを見付けることが出来ず、宇吹は床を捜し始めた。
口と鼻を覆うように手を当て、死体の近くに寄る。
本当ならふたりの悲しい、変わり果てた姿など見たくない。
草壁薫と言う男も被害者であり、包丁が突き刺さったままの姿は、目を背けたいものであった。
しかし宇吹はそれに堪え、3人が横たわる傍の床に手を触れる。
視線を少し上げた時だった。
──ん?
目の前の "異変" に気付く。
そこは秋山の血が、大量に流れた部分。
鮮血が流れていた時には気付かなかった。
だが今その血が乾いたことにより、"浮かび上がって" いる。
それはそこに彼の血が流れたからこそ。目に見えるようになった。
──偶然の産物である。
血は地面を這うように流れる。障害物などがなければ、それは何処までも。
その流れる先に、もし窪みでもあれば─?
血は水と同じように窪みに入り、窪みを埋めるようにして流れていく。
そう。その現象が目の前に起こっていたのだ。
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