2481人が本棚に入れています
本棚に追加
乾いたことにより、薄い赤い線が浮かび上がっていた。
線は四角い形を描いている。
大量に流れていったであろう、血の勢いはそこで弱まり、不自然に "減った" 量が、その先に流れていたのである。
……隠し、扉…?
そう思うと、宇吹の心臓が大きな音を鳴らした。
描かれている四角い線の中は、人ひとりが入れる大きさをしている。
それはますますに、隠し扉を濃厚な物にさせた。
目の前のそれに釘付けになり、鼻を覆う手が離れた。
そっと近付き、手で触れてみる。
手に伝わる感触は、今までの床と何ら変わりはない。
しかしある部分に、ひんやりと金属の冷たさがした。
冷たさを感じた場所に、目を凝らす。
するとそこには、床の色と同じに塗られた "取っ手" が見えた。
パッと見ただけでは、決して分からない。
それは床下収納と同じ、指を入れれば引っ張る部分が出てくるタイプの物である。
宇吹は息をすることを忘れていた。
息を殺しながら、そっとその金属に指を入れた。
最初のコメントを投稿しよう!