永訣

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カチャリと僅かな音を立て、指を引っ掛ける丸い輪っかが出てきた。 それに人差し指を入れ、ゆっくり引き上げる。 重さはそれ程ない。女性の宇吹でも簡単に持ち上がった。 扉を開けていくと、赤い物が見える。 ───風船……? そう思った時、風船はパンッと音を出して割れた。 瞬間、カメムシを彷彿させる青臭いような、硬貨を思わせる鉄のような臭いが宇吹を襲った。 咄嗟に顔を腕で覆うよう、身を守る反射反応を取る。 輪っかから指を離してしまい、持ち上げられていた扉がガシャンと落ちる。 宇吹に背を向けていた一ツ橋は、この音で異変に気付いた。 ーーーー 「──宇吹さん!?」 振り返った俺の目に、何かから身を守る宇吹さんが映った。 それに驚き、慌てて駆け付ける。 「どうしたの?大丈夫!?」 「うん。大丈夫、みたい…」 宇吹さんは顔を庇った右腕、体を見渡して言った。 何の音だったんだ?と訊こうとすると、彼女がニコッと笑った。 「それより、あったよ!」 「あった?」 最初その意味が分からず、きょとんとしてしまう。 「隠し扉っ!」 少し興奮気味に、大きな声で言われた言葉。 それに目を見開いた。
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