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「───宇吹さん?」
一瞬頭の中が真っ白になり、目の前の光景に理解出来ない。
でもすぐ弾けるよう、宇吹さんの元に駆け付けた。
「宇吹さん!!」
しゃがみ込んで、倒れる体を抱き起こす。
目を閉じ、苦痛に顔を歪ませていた。
「宇吹さん、何があったの?大丈─」
「─うっ」
宇吹さんは俺から離れ、顔を隠すように蹲(うずくま)ると、その場で嘔吐してしまう。
この数日間。何も食べていないので胃の中は空っぽだが、それでも何かを吐き出すようにしていた。
俺はそれに驚くだけで、オロオロしてしまう。
とりあえず出来た行動は、背中をさすってあげるだけだった。
涎なのか胃液なのか分からないが、白っぽい液体が吐かれると、嘔吐は治まった。
宇吹さんは壁にもたれ、顔を上げる。その顔はとても苦しそうだ。
……な、何が起こったんだ?
急に…どうしたんだ……?
訳が分からず落ち着いていた頭は、またパニックになる。
ほんの数分前まで元気で、笑っていたのに。
隠し扉の存在を教えてくれた時、しんどそうな素振りは全くなかった。
それなのに、どうして……?
この地下に何かあったのか?それなら俺にも異常が出てくるはず。
それなのに、何で宇吹さんだけなんだ!?
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