永訣

62/89
前へ
/542ページ
次へ
秋山のナンバーの鍵は、熱い部屋にあった。 とてつもなく熱く、汗が止まらない程の。 その部屋は何処だった──? そうだ……一番最初の部屋だ! 蒸気がそこかしこから出ていて、省吾が取りに行った──! 『8』が最初の部屋にあったことを思い出した。 するとそこから絡み合っていた糸がするすると解けていき、全てが鮮明に蘇っていく。 省吾から鍵を丸熊が奪い取って、自分のナンバーの鍵じゃなかったから……。 苛立って…………鍵を────床に叩き付けていた! ハッとその時の光景を思い出し、俯いていた顔をガバッと勢いよく上げた。 急いで宇吹さんに近付き、話し掛ける。 「宇吹さん、ごめん!ちょっとここから離れるよ。でもすぐ戻って来るから!」 そう言うと宇吹さんは黙ったまま、首だけで頷いて答えた。 宇吹さんの容態はとても心配だ。でもそれよりも『8』の鍵を早く取りに行かないと……! そう思った俺は早馬の如く、駆け出していた。
/542ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2481人が本棚に入れています
本棚に追加