永訣

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狭過ぎて手は入らない。 かと言って隙間に入れる棒などもない。 と、なれば方法はひとつしかなかった。 立ち上がり、ふぅーっと深い息を吐く。 …この金庫は重いだろうか?簡単に動いてくれるだろうか? こんなこと…。本当なら、自ら進んで出来ることじゃない。 だけど今は、そんなことも言っていられない。 ──俺には時間がない。一刻を争うんだ……! カッと目を見開くと、そのままの勢いで金庫に手を触れた。 瞬間手の平は、燃えるように熱くなる。 この部屋にある全ての金属類は蒸気の影響により、かなりの熱さを帯びていた。 「うう!あ"あ"ああああ!!」 ジューー……と、鉄板の上で焼ける肉のような音が鳴る。 手の平は金庫の金属で焼かれていた。 鋭い痛みが頭を突き抜けていき、激痛でどうにかなりそうになる。 痛みに顔を歪めながら、歯を食いしばり、金庫をずらしていく。 金庫はそれなりに重かった。だけど動かせない重さではなかった。 残された力を振り絞り、金庫を動かす。 「──あ"あ"あ"ああああ!!」 力を込めた叫び声と共に、ずれた金庫の下から鍵が姿を現した。 鍵の存在が視界の中に入って、金庫から手を離す。 熱された金庫に引っ付いていた皮膚は、べリッと剥がれた。 皮膚がなくなり、露になった肉が真っ赤になる。
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