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直接ではないにしろ、鍵が当たる肉の部分からは、刺すような痛みがする。
それでも強く、鍵を握り締めた。
地下の階段を駆け下り、急いで宇吹さんの元に走る。
扉の近くで全く動くことなく、ぐったりしていた。
「宇吹さんっ!」
すぐ前にしゃがみ込み、声を掛ける。
彼女はゆっくりと、顔を上げた。
上げられた顔はさっきよりも青白くなっていて、目に力はない。
表情にも瞳にも、殆ど生気を感じられなくて。それを見た俺の胸が、ズキリと痛んだ。
見ていられなくて顔を背けてしまう。沈痛に染まる心が、顔を顰めさせた。
「────さ……ん」
消え入るような、微かな声。
それに反応して、顔を正面に戻す。
──目の前の彼女は苦しいはずなのに。
無理やり口角を上げて、微笑む。
その健気な姿が。その儚げな彼女が。堪らなく──心臓を鷲掴みにした。
愛情と憂愁が混ざった感情が痛みとなり、理性の歯止めを壊す。
気付けば彼女を。強く、強く抱き締めていた。
「───帰ろう……」
高まった感情は、涙と変わる。
「……う………ん」
震える胸の中で、宇吹さんの小さな声が聞こえた。
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