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「──カシャン」
手に入れた『8』の鍵を回すと、ロックが開いた音がした。
鍵をポケットの中に入れ、そっとノブを握る。
ドアノブは抵抗なく動き、少しだけ開けて中の様子を覗いた。
中は小さな部屋だった。天井、壁とくすんだ灰色をしている。
部屋の中央に白い机。その奥にはまた、扉が見える。
「宇吹さん」
声を掛けてから、しゃがみ込む。
「行こう」
そう言ってゆっくり立ってもらい、肩に彼女の腕を乗せる。
屈むような体勢になりながら、歩き出した。
「……ごめん、なさい……」
「気にしない。さっ、早くこんな所から出よう」
消え入るような小さな謝りに対し、明るく答えた。
部屋の中に入り、宇吹さんを支えながら、中央に歩いて行く。
机の上には黒い箱と、白い紙が置いてあった。
『急がば回れ』
視線を紙に落とすと、文字が書かれていた。
……どう言う意味だ…?
意味が分からず眉根を寄せてしまう。
とりあえずこの意味は放っておき、黒い箱の中を確かめることにした。
箱は漫画などに出てくる、宝箱みたいな作り。
その宝箱の蓋を、パカッと開ける。
中には青いバラが、所狭しと敷き詰められていた。
真ん中に指輪を固定するクッションのような物が見え、そこにひとつ、鍵が挿さっている。
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