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仮にこの言葉がヒントだったとしても、この建物内に遠回りするような場所はあったか?
───否。答えは『ない』だ。
部屋と言う部屋の中には全て入ったが、何処かに繋がるような所はなかった。
建物内もひと回り歩いたが、全ては行き止まりにぶつかった。
前に進める道は隠し扉の先の『ここ』であり、他にはもう、道はない。
………遠回りしろって言っても、その遠回りする道がないだろうが。
心の中で苛立ちを呟く。
それに、犯人を信じる気持ちなど毛頭なかった。
むしろ憎くて憎くて、仕方ない。
どうせこの言葉も、ヒントのように思わせているだけ。
俺達の戸惑い、悶え苦しむところが見たいだけだ──。
そう思った瞬間、省吾を始め、逝ってしまった仲間達の顔が頭の中を過った。
怒りと苛立ちが沸いてきて、鍵を握る手に強い力が篭る。
その場に立ち尽くしていると、耳元で宇吹さんの声が聞こえた。
苦しみが漏れ出た声。
それにハッと我に返り、慌てて足を動かした。
こんな所で、ジッとしている時間はなかった。
早く外に出て、宇吹さんを病院に連れて行かないと……!
俺は机の前にある、扉の前まで移動した。
気を引き締め直して、ドアノブを握る。
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