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女は廊下の先を見つめながら、そっと。狐のお面を外した。
顔はまだ幼さが残り、セーラー服を着ているところから、学生だと思われる。
露になった顔は、決して醜くない。
むしろ透き通る白い肌に整った顔は、美人の部類に入る。
だが左頬。目の下から顎の下まで、大きな火傷の痕があった。
ピンク色のケロイドが周辺の肉を引っ張り、そこだけは醜い姿となっていた。
「────許さない」
ぽつりと女は呟く。
顔は俯いていたが、その表情は怒りと憎しみに染まっている。
「……何の苦しみもなく。何の辛さもなく。何の悲しみもなく。何の痛みもなく。のうのうと、幸せに生きている奴らが憎い」
吐き出される負の感情。
「そんな奴らは全員……。死ねばいい。生きている価値などない。何の不自由もなく、幸せに生きている奴らなんか、死ねばいいのよ」
顔を上げた女の顔には、怒りと憎しみ。それを超越し、復讐を宿したものとなる。
目も暗く濁り、同じように復讐の色となっていた。
女は強く睨むように、呟く。
「死を」
「───制裁だ」
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