永訣

89/89
2483人が本棚に入れています
本棚に追加
/542ページ
女は廊下の先を見つめながら、そっと。狐のお面を外した。 顔はまだ幼さが残り、セーラー服を着ているところから、学生だと思われる。 露になった顔は、決して醜くない。 むしろ透き通る白い肌に整った顔は、美人の部類に入る。 だが左頬。目の下から顎の下まで、大きな火傷の痕があった。 ピンク色のケロイドが周辺の肉を引っ張り、そこだけは醜い姿となっていた。 「────許さない」 ぽつりと女は呟く。 顔は俯いていたが、その表情は怒りと憎しみに染まっている。 「……何の苦しみもなく。何の辛さもなく。何の悲しみもなく。何の痛みもなく。のうのうと、幸せに生きている奴らが憎い」 吐き出される負の感情。 「そんな奴らは全員……。死ねばいい。生きている価値などない。何の不自由もなく、幸せに生きている奴らなんか、死ねばいいのよ」 顔を上げた女の顔には、怒りと憎しみ。それを超越し、復讐を宿したものとなる。 目も暗く濁り、同じように復讐の色となっていた。 女は強く睨むように、呟く。 「死を」 「───制裁だ」 ーーーー
/542ページ

最初のコメントを投稿しよう!