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瞬がリュックの鏡を出すと、手で鏡が塞がれていた。
「だから、それはもう知っている」
少年が、瞬を羽交い絞めにすると、瞬の姿が消えかかっていた。
「海晴!」
海晴が、瞬の後ろの少年を殴り飛ばす。でも、瞬は別の空間へと飛ばされていた。
窓の無い、コンクリートの一室に、瞬は落下していた。
「どこだ、ここ?」
「どこでも、いい」
海晴に殴られた少年は、唇を大きく切っていた。少年が、手でどこかに合図すると、ドアの外へと消えて行った。
瞬が、少年を追いかけるように、ドアを開くと、そこは、どこかの研究施設のようだった。
「あいつ、馬鹿力だな」
あいつというのが、少年を殴った海晴のことだとしたら、馬鹿力どころではない。よく唇を切っただけで済んだと思う。
瞬が通り過ぎた部屋を覗くと、中はどこも白く、机に座った少年少女が、顕微鏡で何かを栽培していた。
「細菌だよ」
壁も白、床も天井も白、作業服も白い。
「俺達、無差別殺人がしたいわけではないからな、見分ける能力者が必要なんだよ。誤ったテロなんて、ただの殺人だしな」
少年は、武蔵と名乗った。『死から来た者』ではないがランクが低く、組織から追い出された者で、空間を転移することが可能だった。細菌を撒く実行犯に抜擢されているが、大量殺人はしたくなかった。
そこで、組織を見分ける能力者を拉致してこようと考えたらしい。
ランク外で、組織から出されたのは瞬も同じだった。ただ、瞬は炎座にも選ばれなかったということだ。
「おい、喫茶室に行く」
武蔵に連れられて行った先は、喫茶室と名付けられた、食堂だった。
「何か、飲むか?」
拉致してきたには、扱いが妙な気もする。
瞬が、喫茶室の厨房?らしき場所に入ると、食材が僅かに置かれていた。
「ホットケーキ、焼いてもいいか?」
動いたので腹が減ってしまった。
「いいよ」
瞬が、ホットケーキを焼くのを、武蔵がじっと見ていた。
「上手いな」
「食べるか?」
武蔵が、箸でホットケーキを食べていた。
「…おいしいな」
武蔵は、仕事があるので、外で食事もするが、ここの研究員は、この施設から外に出た事がないものも居る。
「研究員に分けてもいいか?」
「いいよ」
研究員が、何人もやってきて、ホットケーキの試食会になっていた。
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