第1章

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「あのな、炎座は、高瀬瞬を連れて来られなかった。怖い兄貴が見ていたし、次には御使いまで係ってきた。炎座は、誰も、見捨てたりしない」  でも、今、瞬は拉致されていた。 「組織が力を付けて、やっと手に入れる許可が出たというだけ」  武蔵は、ここの住人は皆兄弟のようだと言った。見捨てられ、孤立し、何もかも無くした子供が寄り添ったのが始まりだった。そして、世界を変える希望を胸に、個人の能力を発揮できるようになった。  素直にホットケーキで喜ぶ研究員、確かに組織を脅かしている存在とは思えなかった。  でも、会屋の妹のように、一般市民が拉致され、家族が壊れてしまった場合もある。 「ランク外で差別される世界が、俺は、憎かったよ」  それは瞬にも分かる。ランク外で、瞬も差別を受けている。 「今は、海晴?だっけ、護衛も居るからな。施設見学したら、帰れよ」  武蔵は、仕事があるからと、どこかに立ち去っていた。  瞬は、素直に施設見学をすることにした。機密の部屋には、どのみち入れないが、瞬には写真があった。又、人体実験をしているのではという疑いは、直に無くなってしまった。  皆、真面目で潔癖、真剣に研究に取り組んでいる。野菜の研究、どのような環境でも野菜を育てられる仕組み造り。サバイバル術、畑作業、テロ行為さえしなければ、存在していても良いと思える程だった。  野菜を渡されたので、洋食風にアレンジしてみると、列をなして試食する。  でも、これは一面なのだろう。海晴が心配するので、深い詮索はせずに、瞬はトイレの鏡から自宅へと帰った。  自宅の虎の間に出た瞬は、海晴の姿を探した。 「海晴?」  海晴の姿が、影から浮かぶと、瞬を抱きしめていた。 「武蔵って奴が来て、ちゃんと帰すから自宅で待てと言った」  海晴が、悔し涙を落とす。 「これが、本当の拉致だったら、俺は又瞬を失っていた」  階段を見ると、水元が来ていた。 「そうだね、彼らの方が上だね」  狙われている会屋には、護衛が増えたらしい。 「狩りの仕方を知っている」  水元の後ろに、腕組みした高瀬も立っていた。 「海晴、ちゃんと護衛を学べ。その間、水元に瞬の護衛を任せろ」  高瀬、瞬が拉致されたと聞き、仕事を抜けてきていた。  高瀬は、瞬が戻ったと、どこかに連絡すると、現場に戻ると言って、去って行った。 「海晴、どうする?」 「護衛、組織の訓練を受けてきます」
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