第1章

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 今度は、水元がどこかに連絡を行っていた。瞬は、海晴をコックにしたかった。プロの護衛にしたかったわけではない。 「海晴、いいよ。俺なら、自分でどうにかするから、コックの修業をしていて」  でも、武蔵が瞬を帰さなければ、拉致は成功していたのは確かだった。 「いっそ、俺、炎座に行っていようかな」  瞬は、海晴に殴られていた。 「そうだね、海晴が殴らなかったら、俺が殴ったよ。瞬、護衛はいつも自分の命に護衛対象を刻んでいる」 「ごめん、でも、殴り過ぎ…」  瞬、三メートルは吹っ飛び、壁に激突していた。いつものことだが、壁にぶつかった肋骨が折れている。  虎がやってきて、瞬の切れた唇の血を舐めていた。 「俺も、舐めようか?」  海晴が、倒れている瞬を起こそうと、手を差し伸べていた。瞬は、海晴の手を借りずに、壁にもたれたまま、立ち上がった。やはり、肋骨が折れている、瞬の呼吸が浅かった。 「断る」  瞬の声が小さかった。瞬の肋骨が、数か所折れ肺を圧迫しているのだ。 「毎回、毎回、骨を折ってくれる」  瞬が、壁を伝って部屋に戻ろうとしていた。水元が手を貸そうとしたが、瞬がひと睨みする。いつも穏やかな瞬だが、怒ると、人を拒絶する。 「多分、炎座の武蔵は、いつでも俺を拉致できる。だから、俺に炎座に対しての護衛はいらない。水元さん、会屋を頼む。あいつは、拉致されたら戻れない」  瞬は、自分のベッドにたどり付くと、肋骨を庇って寝転ぶ。殴られるのは正論だが、最初から炎座に行ってしまえば、もう瞬の拉致はないような気もする。炎座は、瞬を殺すつもりはないようだった。  北原に会って相談したかったが、アポイントが取れなかった。  預かり屋のバイトの帰り、やはり夜道で、武蔵が待っていた。 「本格的に拉致しに来た。学校も、連休だし拉致日和だろ?」  拉致日和というものがあったとは、瞬は知らなかった。 「海晴も、呼ぶな。怪我させたくない、誰とも戦いたくない」  既に、水元に知られているだろう。このまま、話を長引かせれば、瞬の護衛がやってくる。 「長引かせないよ」  瞬は腕を掴まれると、空間を転移していた。  瞬が着地した地面は、木でできていた。しかも揺れている。ここは、船の中なのかもしれない。 「どこでも逃げられるだろ?リュックの鏡を奪っても、人間の瞳から逃げるだろ?瞳も映しているから」
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