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そこまで小さいものから通ろうとは、瞬も挑戦したことがなかった。基本、体が通る大きさが望ましい。
武蔵が、船の窓を開けてみせた。空気がとても熱かった。周囲はジャングルのような密林に囲まれていた。
船を漕いでいる、数人の人影が見えていた。他に、洗濯をしている女性と、姿は見えないが喋っている女性が数人居る。
「瞬が、この船から出たら、この船、爆破することになっている」
ここに居る人間は、瞬とは無関係だった。瞬が、見捨てて逃げる可能性もある。
「十五人だよ、この船で生活している人数はね。それと、非常勤が時々居る」
敵でも、無害な人材を殺せないのが、瞬の甘さだった。武蔵は、瞬の性格を把握しているようだった。
「それと、外部と連絡の度、ここに居る誰かが処分される。つまり、携帯電話も禁止。インターネットもするな」
瞬が携帯電話を見ると、圏外になっていた。こんなジャングルで使える携帯電話は、かなり限られている。
「食事は自由、船の食材を勝手に食べていてくれ。風呂とトイレは、この部屋にある。それじゃあ、又会おうな」
武蔵が、仕事があると、どこかに消えていた。
第三章 炎座
瞬が船の中を見てまわると、炎座の人間は意外にも、あれこれ言っては付いてきて、説明までしてくれた。
瞬が拉致されてきた人間と聞いても、その態度は変わらない。
瞬は部屋に戻ったが、この部屋、何も無かった。風呂とトイレは確かにあったが、他には何も無かった。
とりあえず暇なので、勉強をしようかと、瞬はリュックを取り出した。薄暗いので、電気スタンドを出したが、コンセントが無かった。簡易的な発電機を出し、ついでに寝袋も出した。
着替え一式も出すと、ふと着替えにメモが挟んであった。
『無事ならば、上着を戻せ』
これも外部との連絡になるのだろうか?瞬は、上着をリュックに入れた。こんな芸当ができるのは、虎丸しかいない。【預かり屋】の店長、闇や黒を通して、物を出し入れする。瞬のリュックの中は、虎丸の指定で黒になっていた。
「外部と連絡すると、ここの誰かが殺され。俺が逃げると、この船が爆発」
声も送れるのかは分からない。
「人が増えるなは、ありませんでしたね」
部屋に、手越が入ってきていた。
「手越さん?」
手越は、船に仕掛けられていた爆弾を、瞬のリュックに押しこんだ。
「上司命令でね。又、潜入してきました」
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