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にこにこと笑いながら、あっさりと手越が喋る。
「爆弾は処分しましたし、もう、瞬君は帰ってもいいのですが、武蔵は厄介ですね…」
手越が、瞬の着替えをチラリと見た。
「俺、瞬君になりすましましょう。で、瞬君は帰ってください」
手越が、着ている服を脱ぎ捨てて、リュックの中に詰め込む。瞬の服を着ると、顔の表情が代わり、身長や手足の長さも変わった気がした。手越、瞬になっていた。
「ただの変装なんですけどね」
手越、容赦なく瞬にリュックを被せて消していた。
今回、瞬の意志に関係なく、あちこちに転移する。瞬が着地したのは、ふわふわのカーペットだった。虎丸の家には、こんなカーペットはない。瞬が、前を見た時、そこに北原が居た。
「北原さん」
ラフな格好をした北原は、白いシャツに白のスラックスを履いていた。
「虎丸店長!会屋?」
虎丸が、瞬を見て苦笑いをしていた。
「どこかに瞬を隠そうかと思っていたら、都築さんから連絡を受けてね、こっちで預かるとね」
ここは都築の自宅のようだった。
「炎座の武蔵に目をつけられたらね、全ての世界で逃走不可能と言われる。確かにその実績がある。だから、預かり屋としては、どこに隠そうかとは、悩んでいたけど」
虎丸、隠し事をするときは、全く別の話を始める。瞬は、虎丸に何を隠しているのか聞き出したいが、今は、北原も気になっていた。
北原、まるで魂が入っていないような、虚ろな目をしていた。『死から来た者』で、幾度も北原には会っていたが、こんな状態ではなかった。
「会屋?」
「ダメ、プロフィールを読ませない」
北原に何があったのかは、分からない。しかし、瞬は、都築に憎しみを覚えていた。
部屋のドアが開くと、女性に連れられて、少年が三人やってきた。
「挨拶しましょうね」
瞬は、固まってしまった。北原によく似ているが、既に子供ではない。瞬と同じ年頃の少年が、三人立っていた。
「成長が同じというわけではなくて、こっちの世界の現象の一つで、ある程度の年齢まで数年ないし数か月で育ち、その姿のままで幼児期を過ごす」
幼児期?瞬は自分の姿を見ていた。
「瞬君、遊ぼう」
中身は、まだ子供のようだった。
「瞬、一緒に遊びなよ」
並んだら、瞬よりも身長が高かった。
「イヤです」
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