第1章

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 北神探偵社 終 『炎座』 第一章 談話室  北神探偵社が休業となり、一年が経過していた。  高瀬 瞬(たかせ しゅん)は、預かり屋で、月曜日と火曜日の担当となり、とりあえず一人前の預かり屋に成長した。まだ虎丸の元で、金曜日のみ修行しているが、一人でも店を仕切れるようにはなっていた。しかし、瞬の夢は刑事、まだ諦めていなかった。  ビルに奇妙なメンバーでの同居?は、今も継続されている。  神宮寺の、アンティークショップが開業したとの知らせを受け、瞬は、上の階に住んでいる、田中 亜里沙(たなか ありさ)に声を掛けた。  瞬と、亜里沙はかつて、北神探偵社でバイトをしていた。 「早いよね…一年」  亜里沙は今も大学生だった。 「瞬君は、高校二年だし、預かり屋だし」  それは、一年前とそう変わっていない。高校一年が二年にあがり、預かり屋の見習いが、店員になった程度だった。会屋は、こっちの世界だったのならば、大学生だったが、『死から来た者』に移ってしまっていた。  亜里沙のふわふわの巻き毛が揺れていた。亜里沙は、瞬の属する『死から来た者』と敵対している組織、『神の御使い』に属している。瞬が、御使いの能力者なので、その護衛のために亜里沙はビルに住んでいる。  敵対組織だが、ビルの中では友好的で、瞬に対することでは、共闘体制にある。  ビル一階の元レストランは、今はこのビルの食堂と化していた。  瞬は、食事を造り、亜里沙はデザートを作る。 「神宮寺さんの、開業祝いに花を贈る?」 「いいですね」  瞬と亜里沙の関係は、一番近いもので兄弟だった。 「で、北原さんにも連絡したの?」  瞬の動きが、暫し固まる。何故、北神探偵社が休業中なのか?神宮寺は北原に惚れていたが、北原は『死から来た者』の幹部と結婚したのだ。  会屋の未来予測の通りに、北原の相手の都築は打算的で、出世の為に同じ幹部の女性と結婚し、北原を養子の扱いにした。都築と北原には、遺伝子上の子供が三人生まれ、主体となった北原の子供と認知されている。都築が女性と結婚したことにより、養育権が北原になってしまい、慌てた都築は北原を養子にし、どうしても欲しかった子供を、孫の扱いにしたのだ。 「言えません」  北原は『死から来た者』に所属を変えていた。元々の北原の家族は、記憶を改竄され、別の人間が息子として行っている。
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