第1章

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 千尋が、笑顔になっていた。指示系の千都が、別の部屋に移動しても、千歳は眠っている会屋を起こそうとはしなかった。手に入れた小動物を観察するかのように、千歳が寝ている会屋をじっと見つめていた。 「瞬も、寝るのか?」  その前に風呂に入りたいが、着替えはなかった。 「風呂はあるのか、俺、昨日から風呂に入っていなくて、臭い。着替えもあるかな?」  千尋は、瞬の表情をじっと見ている。 「着替え、どんなのがいいのか?家政婦の美野里さんに頼むと、ある。風呂は、この部屋にもある」 「それじゃあ、風呂に入る。美野里さんに、パジャマとパンツを頼む」  瞬が、風呂に入ると、かなり広い風呂で、大きな窓も付いていた。  窓を開くと、中庭となり、まるで露天風呂のようだった。 「いい眺め…」  風呂のドアが、遠慮もなく開くと、千尋が怒っているようだった。 「窓、ダメ、セキュリティ落ちる」 「千尋、その前に、ドアはノックして入る。かつ、中に人が居る場合は、入っていいか確認をとる。いいよと言ったら入ってよし」  千尋、瞬の裸で真っ赤になっていた。子供なのか、姿のまま扱っていいのか、瞬は迷う。 「入ってもいいか?」 「ダメ」  千尋は、下を向く。 「窓締めると、いい。タオルは言ってなかったが、必要なのか?教えるといい」 「タオルは、一個、必要。バスタオルも頼みます」  千尋、朴訥としているが、必死で瞬とコミュケーションをしようとする気持ちが伝わってきた。 「ありがとう、千尋」  都築の子供たちは、人間の温もりに飢えているようだった。早いスピードで成長してしまったが、どこか子供のままで、母親の温もりを探しているのかもしれない。風呂から出た瞬は、千尋に抱き込まれて眠っていた。 第四章 炎座2  次の日、会屋を都築宅に残し、瞬は海晴の訓練所に出向いた。瞬は護衛が必要ないと言ったが、勝手に、千都が付いてきていた。  千都が付いて来たせいで、千都に付けられている護衛も付いている。  訓練所の受付で、海晴を呼んで欲しいと頼んだが、もちろんランク外ということで、瞬の存在が無視されていた。  何度頼んでみても、受付は何も行おうとはしない。瞬は、海晴の携帯電話に掛けてみたが、話し中になっていた。  次に、海晴に連絡を取りたいと、水元の居る警察に行ってみたが、同じくランク外の瞬は受付を無視されていた。
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