第1章

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 瞬は、武蔵をどこかで見た気がしていた。それが、何なのかやっと分かったのだ。 「どうして?」 「武蔵の顔、亜里沙さんのお母さんに似ているのです。会って、昔の怪我を確認して、亜里沙さんの弟本人か確認したいです」  水元が、ふと黙ってしまった。武蔵は、炎座でも有名な人物だった。例え、亜里沙の弟だと分かっても、再会させることが叶うかは分からない。 「会屋の妹は、居るのかな?」  水元は、あきらかに話題を逸らしていた。 「会屋の妹は、炎座に居る可能性は低いような気がします。妹を使えば、会屋は組織を抜けて会いに行くでしょう。それがない」  千都が、立ち上がって、外を見ていた。 「ここ、まずいね」  警察の不手際?で、人口の流失が続いている。ここで、瞬が拉致され、会屋が拉致されれば、警察の能力も疑われる。 「空中から来ますか?転移ですか?」  水元は、空中に筋状に文字を展開していた。 「もし、俺だったら、警察内部で犯行を起こすよ。無能だと証明するために。しかも、派手に」  外で、何か騒ぎが起きていた。瞬は、そっと外を確認して、駐車場の真ん中で起きていることに気が付いた。 「北原さん?」  複製品の北原も、検事で仕事をしていた。知識は北原と同等のものが、入っているらしい。  駐車場に黒いワゴン車が止まり、北原を連れ去ろうとしていた。警察は、黒い車を取り囲んでいる。  北原は、警察幹部の都築の愛人だ。しかも、都築が養子にするという、公認の相手だった。  それを、警察の敷地内で誘拐されるでは、確かに警察を馬鹿にする行為としか思えない。  瞬が窓から飛び降りようとすると、水元が止めていた。 「行ってはいけません」  テレビやらの報道陣が、取り囲み始めていた。会議室のテレビを付けてみると、大画面に生中継が映っていた。 「幹部の愛人、警察の駐車場で、テロリストに拘束されています」  犯人の要求は何か?など、派手な文章も飛びかっている。  犯人は、何の要求もなく、銃を突きつけたまま、北原の上着を脱がせて、投げ捨てた。 「嫌な、感じがする」  千都、どこかに電話をかけていた。  北原は、そのまま服を脱がされ続け、降ろされたズボンは、膝のあたりに固まった。ぴったりとしたボクサータイプのパンツの中に、握られたままの銃が射しこまれていた。 「この映像は流せないだろう」
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