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高瀬は、瞬がこのまま【預かり屋】を続けて欲しいとも願っていた。【預かり屋】ならば、護衛の対象となる。虎丸のように、預かり屋をしながら、他の仕事もできる。
【預かり屋】で、今のように皆の食事を作ってくれる、レストランに勤めてくれれば、高瀬の心配は激減する。
しかし、瞬も頑固な面がある。皆に無理だと言われても、刑事を目指し続けていた。
「それと、バイトとか、海晴に相談したのか?」
瞬の茶を入れる手が、一瞬止まった。
「…相談しなかったのか…」
海晴は、瞬の護衛だった。海晴 錬磨(みはる れんま)S級に属する護衛能力者、本来要人を護衛する筈のランクなのだが、本人は家業のレストランを継ぐべく、コックを目指して修行中だった。しかし、海晴のコックの腕前は壊滅的だった。海晴の両親も、むしろ瞬がコックになってくれたらと、願っている節もある。しきりに、何が採れたから遊びにこいと、連絡が来るようになっていた。その度、海晴の両親が、瞬にレシピを伝授している。
「はい…」
神宮寺の所に行ったら、募集の張り紙を見て、その場で決めてしまったのだ。
「護衛とも、仲良くな…」
海晴が帰ってきたら、瞬とケンカになる。その前に避難する、高瀬だった。
瞬は予備校にも通い始め、夜は遅い。戦闘能力の低い瞬は、せめて足手まといにならないだけの、知識は欲しかった。
瞬が、深夜に帰宅すると、ビールを片手に海晴が、虎の間でテレビを見ていた。虎が居るので、虎の間、瞬と海晴の共有スペースだった。
「…瞬、言いたい事は?」
海晴の口調がゆっくりだった。これは、海晴が怒っているが、事情を聞くために、必死に怒りを抑えている状態だった。
「…バイトの事?」
瞬は、虎の頭を撫ぜて、虎に寄りかかる。虎が瞬を見てから、再び眠る。
「他にもあるの?」
毎回、海晴に相談せずに決めてしまう、瞬は一人前の男だと主張したいのかもしれない。でも、預かり屋と護衛は、セットでなければ存在できない。預かり屋は、危険を孕む職業でもあるのだ。
「喫茶店でバイトすることにしました」
預かり屋で収入はあるが、いつもの世界と通貨が違う。
「高瀬さんから聞いた」
神宮寺が、北原を取り戻したいと思っていること。北原は、取り戻せないと説得したことなどを、海晴に説明する。
「そうだね、都築さんを敵にはできないだろう?」
「分かっている」
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