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カランカランと、ドアに付けたベルが鳴った。確か、看板は中に入れて、鍵も掛けてある筈だった。
「おなかが空いて、倒れそうです…」
若い男が、ドアに凭れ掛かり、倒れそうになっていた。
「瞬君、近付かないで」
亜里沙が戦闘態勢になっていた。亜里沙の後ろから、瞬が、オムレツを差し出す。男は、オムレツを奪うと、息も告げない程、急ぎ食べ始めていた。
「私の名前は、手越(てごし)と言います。詳しい事情は言えませんが、潜入捜査官です、先方に素性がバレ、抹殺されるところを逃げてきました」
抹殺の前に、監禁されていたが、そこで食事がなかったらしい。所属は『死から来た者』だった。
【談話室】は、瞬と亜里沙が居ることで、やや一般の世界とは離れていた。ここなら、仲間に救けを呼べる、そう思って逃げ込んだが、オムレツを見て我を忘れたらしい。
瞬は危険を感じていなかったが、水元が車を家の前に止まると、走って飛び込んできた。
「瞬君!」
海晴も空間転移してきたらしく、厨房から、姿を現した。
「瞬、近くに、変な気配があるよな」
水元が、手越を見て、どこかに連絡していた。
「…潜入捜査官?手越さん、貴方、ここはダメですよ」
水元が、現状を説明していた。瞬が、【預かり屋】で護衛対象ということ。護衛付きの人材には、捜査官であっても、許可なく近付けば攻撃できるということ。
「許可、いただけますか?」
何故か手越は、瞬と亜里沙に話したい事があるようだった。
第二章 新しい店員
閉店後の、談話室で、瞬の正面に手越が座っていた。瞬の隣には、亜里沙が座っている。
手越という人は、どことなく特徴が無く、集団に消えてしまいそうな雰囲気だった。目立つことがない特徴が、ここでは目立つ。
「私は、新興組織に侵入していました。ここ十年で、急激に勢力を伸ばしている組織です。炎座(えんざ)といいます」
炎座は、それぞれの組織で、ランク外になる予定の子供を攫った。『死から来た者』からは戦闘能力の低い者、『神の御使い』からは集団に属せない者を攫った。
次第に、子供が炎座に攫われたということを、隠す風潮もできた。無能の烙印を押されたと、解釈したのだ。
しかし、組織はその誤りに気付いた。炎座で育てられた子供は、次々に頭角を現したのだ。
未来の予知能力、植物の操作、空間の転移、他、戦闘能力ではないが、組織に必要な能力だった。
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