第1章

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 炎座の目的は、何なのか?潜入捜査で分かったことは、炎座は世界のバランスを変えようとしているということだった。 「世界のバランス?」  数々の組織があり、様々な目的がある。しかし、組織が大きくなり過ぎて、『死から来た者』は、存続することが重要な意味になってしまっていた。  価値を失った組織を潰す。炎座は宣言していた。 「私は、『死から来た者』の組織に戻りますが、暫くは新しい潜入はできません。ここで、働いてもいいでしょうか?」 「へ?」  神宮寺は、話を聞いていたが、話の脈略が分からなかった。何故、ここで働くのか? 「ここは、今、複雑過ぎて、組織の手が出せない場所です。でも、色々な者が近寄って来るでしょう。私は、言えない数の組織に潜入してきた人材です。見破れますよ」  ほんのり笑顔の手越だが、奥深くに怖さを感じた。 「一食の礼です」  神宮寺は、話だけで人が雇えるかと呟いたが、手越は笑顔のままだった。 「水元さん、手越さんの身元は確かですか?」 「機密になっているということは、ある意味確かに捜査員だ」  手越は、又来ますと言って、店を出て行った。 「亜里沙さん、帰りましょう」  何故、亜里沙を同席させたのか?瞬は、手越が、本当は偶然を装って、この店に来たと読んでいた。 「私の弟ね…」  亜里沙も気づいている。亜里沙には、組織に殺される寸前に、消えてしまった弟が居た。 「弟が、炎座に居るのね」  まだ確信は得ないが、手越は異なる組織の亜里沙に、その事実を伝えたのだ。 「海晴、帰ろう」  夕食は、手越に食べられてしまった。ゆっくり海晴と、夕食にするのもいいかもしれない。  家に帰ると、今度は会屋が待っていた。炎座に潜入していた捜査官が戻ってきた。その捜査官に、瞬が会っているとの情報を得たのだ。 「俺の妹も、炎座に居る可能性が高い」  会屋の行方不明の妹も、何かの能力を持っていたのかもしれない。 「捜査官から、内部の様子を聞きたい」  『死から来た者』は、会屋の能力を保護している。会屋を、炎座に接触させることは許さないだろう。 「会屋、炎座は俺も調べるから。会屋は、もう少し待って」  ゆっくりと、夕食とはいかなくなってしまった。 「手越さんは、神宮寺さんの店で働くそうだから、もう少し様子をみよう」  今はまだ、敵か味方かも分からない。
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