03*emergency*

2/30
524人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
その日は、嫌な予感はしていた。 一人暮らしの私の家に、姉が来るというメールを見たのは、実習の後だった。 もう今頃はついている。 そして、私は今日、15時に彼氏の神谷大翔と会う約束をしていた。 けど、実際に実習がなかなか終わらず、終わったのは17時現在。 ダッシュで家に走っているけれど、多分間に合わない。 いや、一番最悪なパターンはきっと…。 「た、ただいまー…」 そーっとドアを開けて声をかける。 ガタガタン、と廊下の向こうのたった一つの部屋から大きな音がして、そこに続く甘い声。 「なんだよ、逃げんな」 「ダメだよ、妹にバレちゃう…っ」 「いいだろ?」 「……」 あぁ、もう…。 絶対、遅かった。 予感は的中している。 私は自分の部屋の向こう側を見たくなくて、廊下とその部屋のドアの前で立ち尽くす。 そして、そのドアノブに手をかけると、少し大きめな声で 「開けたいから、服着てくれないかな!」 と怒鳴ると、さらに部屋の向こうでドタバタと音がした。 「ダメだって、大翔(ひろと)…っ」 「照れんなよ」 「早くしてよっ!!」 何で、私は姉と私の彼氏のラブシーンを聞かねばならないのか! 私はドアノブをしっかりとしめたまま、ガンッと思い切りドアを蹴り飛ばした。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!