第1章

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『あんた馬鹿なの!?さっきあんだけ練習したのに全然違う事言ってるわよ。そもそも何言ってるか全然わかんないわよ!あれじゃ変な子に絡まれたと思うだけでしょ!』 『でもでも里見ちゃん・・・。』 『でもじゃない!』 そんな2人の声が響く中、教室に今度は前方のドアから見知らぬ男子生徒が入ってきた。コウよりも背も高く、がたいも良く見た目も所謂不良と呼ばれていそうな制服を着崩した格好をした生徒だった。 「悪いね御堂。あの2人のやりとりちょっと待っててもらえないか?あ、急いでたりするか?」 「いや、急いではないけど、雪が積もるかもしれないから帰ろうかと思ってたんだ。」 何だか久しぶりに学校で普通の会話をした気がする。 転校から数日はクラスメイト達が積極的に話しかけてきてくれたが、コウのそっけない接し方にあまり話しかけられる機会も少なくなってしまった。もちろん無視されると言うことはなく、最低限の会話や挨拶程度しかしていない状態だった。 再び窓の外を見ると少し雪の降り方が強くなったかもしれない。 「あーそりゃそうだよな。悪い悪い。でも、ちょっとで良いんだ。待っててもらえないか?勝敗はすぐつくから。」 ――――勝敗? 「ん?あぁ、別にいいよ。」 特に急いでいる訳でもないし、先ほどの話が何だったのか気になったので取り敢えず頷いておく。 「そうだ、名乗り忘れてたな。俺は華上リア(かがみりあ)。リアって呼んでくれていいぜ。」 そう言うとリアはコウの正面の席に腰掛けた。すぐと言ったもののどうやらもう少し待つことになるらしい。コウもリアに従って再び席に腰を下ろした。 「俺は御堂コウ。って知ってるみたいだね。俺もコウって呼んでもらって構わないよ。あの子はなんの用だったの?失礼かもしれないけど何を言ってるかわからなくて。」 「いやいや、あれじゃあ誰もわからねぇよ。」と笑いながら「それもこの後2人がちゃんと説明するさ。」 と説明をはぐらかした。 「そっか。」 そう言いコウは机の上の課題を片付け始めた。取り敢えず話が終わったら帰るつもりだった。 「ん?課題だされてるのか?うわ、歴史とか頭が痛くなるわ。こんなになっちまった世界でいくら過去の偉人達が偉業を成し遂げていようと、それが何になるって言うんだよな。あーやだやだ。」 と、リアは手にしたまだ3分の1も終わっていない社会のプリントをコウへと返却した。
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