第1章

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華原さんからの連絡は、その後なく。 閉店時間になって、俺は店を閉めた。 今夜は華原さんも珠美さんも来るだろうかと考えながら、いつもと同じように休み、家のことをこなし、買い出しをして下拵えをしていると。 「よう。今いいかい?」 「相原さん!」 まだ開店までだいぶ時間があるのに、相原さんが入ってきた。 話の内容は、分かっている。 「珠美さんのことですね。」 「やっぱりここに来たんだな、あいつ。」 カウンターに座った相原さんに、お茶を入れて出す。 開店前なので、ビールはまだ。 「珠美さん、家出してきたって言ってましたよ。」 「ああ・・・まあ、なあ。」 気まずそうに、頭をポリポリ掻く相原さん。 普段狼狽える姿をほとんど見せない人なので、とても困っているように見える。
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