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勇者召喚に巻き込まれたのが一ヶ月前。体術や武器を使った戦闘術の妥協点を貰ったのがつい一週間前。闇魔法の合格点を貰ったのが三日前。
その間に、この俺柏木(かしわぎ)恭哉(きょうや)を巻き込んだ張本人宮富士(みやふじ)千尋(ちひろ)は国を支える柱である帝の仲間入りを果たして既に活躍していた。
器用貧乏で、基本スペックはそう変わらないはずなのにここまで差が付いたのは一重に魔力量と適性の差だと言える。
俺の魔法適性は一番高いので闇、その他はどんぐりの背比べだ。千尋は全属性高い上に水を飲むような勢いで魔力を使っても問題ないという。俺がそんな真似をすれば五分と保たない。
そして、俺と千尋のマジシャンズアカデミーへの編入が今日だ。
現在、アカデミー長の部屋で学生生活の注意点を聞いている。
「キョウヤくん、チヒロくんが帝の一人だと知っているのはこのアカデミーで君とわたし、そして第三王女とこのアカデミーで講師をしている一部のものだけだ。帝の正体が公になれば、その周囲の人達は危険に晒される。帝を利用したがるものは万と居るからね。何を言いたいのか、分かるかい?」
柔和な笑みを浮かべる爺さんが優しげな声で訪ねてくる。
優しいお爺さんという感じだが、貫禄のある鋭い眼光に胸を締め付けられる感覚を覚えながら、言葉につっかえない様に腹に力を入れる。
「はい。アカデミー生にしては強すぎる千尋が怪しまれた時にそれとなくフォローをすること、一人で無理ならその一部の講師を頼れ、という事ですね?後千尋のバカが実力を隠すことを忘れた時にぶん殴れば良いんですね任せろ」
「おい、なんで任せろの所だけ妙に気合い入ってるんだよ?殴る気満々マンか?」
野性味のある顔をしかめ、軽く跳ねている髪の毛を掻きむしる千尋。その切れ目で流し目をされた女子は胸を高鳴らせ、八重歯の覗く笑みは女子の心を鷲掴みにする。
つまり俺の敵だ。
「殴る機会があれば遠慮なく殴る。それが俺のポリシー」
「ポリシーは言いたかっただけと見た」
「んまぁ、兎に角、千尋は飽く迄も勇者として来てるんだ。ぶっちゃけ帝とどう違うのかはさっぱり分からんがお前は勇者だ。キャー勇者サマー格好いいー」
「こいつっ!うざったいっ!」
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