第1章

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「千尋、今の受けられるか?」 「流石に流すかかわすかのどっちかだ。普通に受け止めたら腕が折れる」 「だよなー」 三人組の完成された連携攻撃。壁役であるグレイスが黒騎士を出来る限り抑え込み、止め要員であるリミナが極大魔法を唱える。ルリミアはグレイスとリミナがやり易いよう常に気を張っている。 下手に割り込めば三人のリズムが乱れる。 「何度も挑んで、研鑽を繰り返した結果か、凄いな」 黒騎士が盾を出すのも想定済みなのか、グレイスは攻撃の回転数を上げた。 後先考えない魔力の放出と、持久戦等どうでもいいと言えるほどの猛攻に黒騎士は防戦一方になるが、三人には今の内に仕止めようという焦りが見える。 盾の次は何を出すのやら。 床が陥没し、黒騎士が足を取られる。透かさずグレイスは剣と盾を弾き上げて黒騎士を無防備にした。 「リミナ!!」 「ここで仕止めます!!」 「ゴー!ゴー!」 グレイスに名を呼ばれて、ルリミアに腕を上げて応援されたリミナの杖に、今日一番の魔力が集束される。 放たれるは極太のレーザー。その光熱は石畳で出来た床を溶かしながら黒騎士に迫る。 決まるかと思った瞬間、黒騎士から黒い光が迸った。 リミナの放った極太のレーザーは黒い光にあっさりと掻き消される。それには俺も千尋も唖然とした。 俺は勿論、千尋でも困難そうな極大魔法をあんな簡単に消し去るなんて、強いにも程があるだろおい! 三人は苦虫を噛み潰したような顔になり、冷や汗を垂らした。 弾けるようにして消え去る黒い光。黒騎士の第三段階の姿に千尋共々戦慄する。 兜からは二本の角が飛び出し、禍々しさの増した全身鎧。 四本になった腕には、身の丈程ある巨大な盾が二つ、そして剣と槍がそれぞれの腕に握られている。 まさに攻防一体の姿!あんなの相手にしろとか言われたら尻尾巻いて逃げるよ俺は。 「うらぁああああああ!!!」 己を鼓舞するように叫び、グレイスが無謀にも炎を纏って突撃する。 みなぎる戦意に、猛り狂う闘争心に目を血走らせての渾身の一撃は、いともあっさり二つの盾に遮られる。 弾かれて空中を漂うグレイス。その一瞬、二つの盾の隙間から槍が突き出されその身を貫かれた。 「今だ!!」 グレイスが叫ぶ! リミナが魔力を集束させる! ルリミアが手袋の宝石を桃色に輝かせる! 予定された流れのように淀みのない動きで後衛の二人が動いた!
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