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閉じられた空間の筈の部屋に、柔らかな風の流れを感じた。
風は瞬時に突風となり、目に見えるほどの密度を持った魔力の塊となり、その形は二本の手となった。
ゴッドハンド!神の手と呼ばれるその魔法を操り、ルリミアは強引に盾を割るようにして開いた!
「オーライ!リミナ!ぶちこめー!!」
こめかみから大量の汗を流し、それでもなお仲間を応援するルリミア。
「はいっ!!」
杖に集束された魔力は先程の非ではない。
グレイスがもぎ取り、ルリミアが繋いだチャンスをその背に背負い、今!リミナの魔法が放たれる!
魔法はさっきの極太レーザー、だが!その太さを限界まで引き絞り一点集中型となったそれは近くに居るだけで火傷しそうな程の熱量を持っている!
シュン!っと一条の光が走る。それは黒騎士の胸に大穴を開け、城の壁をも溶かして外に通じさせた!
膝を付くリミナとへたり込むルリミア、そして槍に貫かれたグレイスは床に転がったまま笑い声を上げ、ネックレスの効果で外へと弾き出された。
「すんげぇな。あいつ等、あんな化け物に勝っちまったよ」
黒い粒子となって消えた黒騎士のマジックストーン。三人組の落とし物を拾いながら、俺は胸の高揚を抑えられなかった。
手に汗握る戦いとはまさにこのことか。
「多分、他の帝がサシでやっても勝てない相手だ」
「はははそりゃすげぇ!……すげぇけど、なんだかきなくせぇな」
「報告する事が出来ちまったぜ全く」
外から魔物を中に閉じ込め、マジックストーンとするダンジョン。
俺はあんな魔物を見たことがない。
「なぁ。そもそもこの城は、本当にダンジョンなのか?」
未だ誰にも攻略された事のないダンジョンの謎は、この日大きく深まった。
既に胸の高揚は鳴りを潜めている。
目に映るのは二階へと続く階段。
地上三階、地下二階で聳え立つ尖塔の城。上か下か、果たしてどっちに進めば謎が解けるのか。
俺と千尋は、しばらく階段を見つめたまま動かなかった。
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