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「ほぅ? そんなわけがないか」
伊織がニヤリと笑う。こんな状況でも彼女のスタイルは変わらない。
「けれど、君は蛇目日傘についてどれだけ知っていたんだ? 数ヶ月近く会ってなかったんだろう? 昔の顔見知りだからって変わらなんてことありえないだろ。君が獅子の力に目覚めたように、他の誰かが不可思議な力を目覚めさせることは珍しいことじゃない」
「知った風な口を聞いてんじゃねぇよ!! 伊織!! お前は蛇目について何を知ってんだよ!!」
怒りをあらわにする山都に対して、伊織はどこまでも平常通りだ。
「何も、けど、それは君だって同じだ。蛇目日傘が、通り魔や陰火を襲うこと、真朱を連れ去るどうして予想できなかった? 相手のことを理解できていると自称するのなら、その程度のこと見抜けない奴に責められるいわれはないね」
「まだ、まだ、決まったわけじゃないだろ。だって、たまたま偶然」
「おいおい、身内に甘くするなよ。もう状況証拠が揃ってるだぜ? それに真朱は病人だ。蛇目日傘がまともな治療をしてくれるなんて保証はない。だから、今すぐに認めろよ。蛇目日傘は敵だ。過去に彼女と、どんな関係を築いていたか知らないが、あれはもう人じゃない」
蛇の化身だと伊織は言う。
「それとも真朱を見殺しにするかい? 蛇目日傘はただの同級生で、事件とは無関係でした。真朱は死にました。助けられませんでしたってピーピー泣くのかい?」
とんだヒーローだと伊織は鼻で笑った。
「いいかい、山都、この世の中、自分の思い通りにならないことなんていくらでもある。君の嫌う理不尽や不条理さはなんてのは、社会の常識なんだ。中学生の頃、仲良しだからって数ヶ月もたてば人は変わる。中学生から高校生に環境が変われば、人は変わるんだ」
良くも悪くも、人は変わっていく。
「だから、君が助けろ。彼女を助けられるのは君しかいない」
「俺が?」
「変わり果てた自分を戻してほしかったんだろうさ。よく考えてごらんよ。通り魔として犯行を繰り返していた彼女が、なぜ、今回に限ってこんな強行に及んだ? これは君へのメッセージだ。変わってしまった自分をどうにかしてほしいとな」
「めちゃくちゃだろ。だったら直接、言えばいいんじゃねぇのかよ」
「何もわかっていないんだな、この朴念仁め。まぁいい。方針は決まった。助けるべき相手は?」
「真朱を連れ戻して、蛇目に拳骨、叩き込む!!」
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